東慶寺 大地の再生

2020.07.26

以前こちらのブログで、「自然な庭とは?! 東慶寺の庭のゆくえ」
と題して、十勝千年の森のヘッドガーデナー、新谷みどりさんに
植生調査に入っていただいている事はご報告いたしました。

東慶寺には約130本の梅があります。
近年、蕾がつかない枯れ枝が目立つようになりました。
原因は老化、寿命と決めつけ、寄付金も募り、
植樹を始めようとしておりました。

ちょうど時を同じくして、
梅の名所として知られる京都の北野天満宮をお参りしました。
すると、樹齢500年にもなろうかという梅が
元気に花を咲かせているのです。
 
一方、東慶寺の梅は、100年も経っていないものばかりです。
弱った梅が枯れ行くのをそのままにし、
新しい木を植える事に、住職は疑問を抱き始めました。

前々から境内の土に関しては、素人目で見ても良い状態とは思えず、
どうにかすべきとは思っていたものの、
土の総入れ替えなどできるはずもなく、
表面上のみ庭の景色を整えたところで、
土が良くなければ意味が無いと頭を悩ませておりました。

5月のある日、友人から、
「おもしろい庭師さんに鎌倉の実家を手入れしてもらうから、
興味あったらおいで」
との誘いを受けました。
そこで初めて、矢野智徳氏を知る事となるのです。

「大地の再生」という活動をされている矢野さん。
お人柄、哲学や技術に共鳴し、
一度東慶寺にもお越しいただき、境内をご覧いただこうという運びになり、
6月3日にまずは境内地の見立てに入っていただき、
様々な問題点をご指摘いただきました。

そのご指摘は、住職が懸念していた事項と合致し、
矢野さんによる処置が必要不可欠だと判断しました。
矢野さんが、どうしても6月中には応急処置をしたいと仰り、
急遽予定をやりくりし、記念すべき第1回目となる大地の再生が、
6月29日、30日に行われました。
まるで梅雨の大雨が長引く事をわかってらしたかのようで、
6月中に一度入っていただいて良かったと胸をなでおろしているところです。

詳しくはイラストレーターの大内正伸さんがとてもわかりやすく
レポートしてくださっていますので、
こちらを是非ご高覧ください。

緑溢れるように見える境内でも、
道はコンクリートで固められた上に石が敷かれ、
水の流れ道の為にコンクリートの側溝が入り、
建物と山の際は補強の為コンクリートで固められ、
さらに昭和54年に、山を削ってまで行われた宝物館の建設により、
大部分がコンクリートで覆われる事となりました。
  
コンクリート部分が多くなればなるほど、
土の中の水や空気の浸透は少しずつ悪くなり、
銭苔がはびこったり、泥アクがかさぶたのように
広がってしまった箇所も多くなってゆきます。

また、コンクリートで固められた場所に続く山の上でも
変化が起きてきます。
既に宝蔵の裏手の山では、大木の山桜が二本倒れており、
さらにくしくも立ち枯れしていた楢の大木が、
矢野さんに初めて大地の再生に入っていただいた
6月29日の朝、倒れたのでした。
  
自然と人間との分断は、様々な弊害を生み出します。
気候変動も大きな昨今、われわれ人間のしてきたことに
目を向けないわけにはゆかなくなってきています。

コンクリートばかりが悪者だと言いたいのではないのです。
“使い方”なのだと思います。

自然と人間が寄り添い、共存できる環境を目指し、
北鎌倉の風土と気候に適した境内環境作りを進めてゆきたい所存です。

東慶寺の大地の再生、まだまだ始まったばかりです。
皆様にお見守りいただき、また、お力拝借する事もあるかもしれませんが、
どうぞ暖かい目でお見守りいただきたく、宜しくお願い申し上げます。

Facebookページ 大地の再生アルバムはこちら

※写真は、6月29日、大地の再生を行った時のものです。