自然な庭とは?!東慶寺の庭のゆくえ

2018.09.28

現在、北海道にある「十勝千年の森」ヘッドガーデナーの新谷みどりさんに、庭の植物の植生調査をお願いしております。

様々な花が咲く寺として皆さまのご記憶に留めていただいているかとは存じますが、長期的な計画で庭の草木を管理したことがありませんでした。
そうすると、強いものがはびこり、繊細なものは駆逐されるということが当たり前ながら起こります。
「自然のまま」と、「自然に見える」庭とでは、全く違うのだと思うのです。「自然」という言葉はとっても難しいのです。

参道両脇や、奥の菖蒲畑、宝蔵前のスペースは、根がはびこる系統のものや、種が飛んで広がるもの、勢いのあるものがどんどん広がります。

どうしたものか・・・このままではいけない・・・。となり、では「どうしたいのか」を考えました。

京都の禅寺ように枯山水の庭があるわけでもなく、茶室の庭は露地の専門の庭師さんにお願いしております。露地と、いわゆる「ガーデニング」の要素が強くなりそうなその他の箇所とでは、また専門分野が違ってきます。

できれば日本や神奈川県の固有植物、中でも鎌倉特有の風景でもある、「谷戸(やと)」を有する境内に合うような茶花や野の花を増やしてゆき、参拝された皆さんが時間をかけて丁寧に散策し、自然と親しみ心を落ち着かせ、小さな発見がたくさんあるような庭にしたいと思いました。

ちょうどその時に頭に浮かんだのが、かねてから親交のあった新谷みどりさんでした。新谷さんの著書『ナチュラリスティック・ガーデン』の、一節を思い出したのです。

ナチュラリスティック・プランティングとは、多種多様な植物が育つ自然の植生からインスピレーションを得て、その生態系の仕組みを取り入れ、庭の自然を築いてゆく植栽手法のことである。~自然をお手本にしながら、決して真似るのではなく、人が自然に触れた時の感覚を呼び起こす風景を構築してゆくのである。
~土地の気候を知り、多様性に富む自然の植生の仕組みを理解することからはじまる。~ナチュラリスティック・プランティングを実践する庭をナチュラリスティック・ガーデンと呼ぶ。

まずは住職自ら十勝へ赴き、庭の状態をご説明し、力をお借りできないか相談させていただいたのでした。
間髪いれず、「植物のことなら、どこへでも行きます」がお答え。とっても新谷さんらしいお答えで、嬉しくなってしまいました。
そうして、北海道のみならず、世界を舞台に活躍する日本を代表するガーデナーの新谷さんですから、お忙しい合間をぬっての調査がはじまったわけです。

まだまだ始まったところで調査段階ではありますが、寺に住まう者や勤める者のように、日々庭を見ている人間とはまた違った新鮮な目線で(もちろんプロであるからというのもあります)見て頂き、彼女から聞く話には、こちらが全く気づかなかった発見や驚きがあります。

先日も、植生調査にいらしていた新谷さんのご紹介で、苔や雪割草の専門家の方がご来山くださり、ご縁が繋がりました。「多種多様な苔が育つ境内で、専門家による苔ツアーなどができないかな?」と思っていた矢先のことでした。
大雨の中、住職の案内で境内を歩く皆の足取りは軽く、その専門家の方はスキップしているように見えるくらいで、「ほんとうにお好きなのだなぁ・・・」と見ているこちらも幸せになるくらいでした。

今後、どれだけの時間をかけて、どれだけ理想の庭にしてゆけるかは未知数ですが、関わる全ての人間がワクワクしています。
こういった良い兆しは、良いご縁を運んでくるものです。

まだ皆様にお知らせするには早すぎる段階かなとも思ったのですが、良い事は皆さんに知ってもらおう、広めてみようとの思いで、今回書かせていただきました。
どうぞ、これから長い時間をかけての東慶寺の庭の変化をお楽しみに。
そして皆さんも是非、まずは【十勝千年の森】に足を運んでみてください。北海道の大自然を背景に、あそこでしか見られない庭が広がっています。新谷さんの著作も、美しい庭や花々の写真に溢れていて、暇をみつけてはページをめくり、うっとりしています。心からお勧めします。