釈宗演老師没後100年記念茶会

2019.11.30

先日のブログでも、なぜこの茶会をするに至
ったかを書かせていただきました。

茶会をするにあたり、かねてより私どもと
ご縁のあった方々にお力拝借する事となりました。

寒雲亭の本席は、裏千家の冨井宗美先生、
白蓮舎の立礼席は、裏千家の河村加代子先生。

 

後日の職員をねぎらう茶会。同じ道具組で釜を掛けました

【寒雲亭】
本席では、釈宗演老師の所持品や、寺旧蔵の
道具類を使うため、何度も冨井先生とご相談
させていただき、回を重ねるごとに先生との
信頼関係を深められ、先生の茶道における経歴を
思えば当然ではありますが、「このお方に
お願いしてよかった、安心してすべてを
お任せできる」と思え、またお道具も、意見
が違うことなく、二人で「何もかもぴったり
ね!」と言い合え当日を迎えましたが、
皆さまいかがでしたでしょうか。
主菓子は東京の岬屋さんによる薯蕷饅頭で、
「夢」の焼き印を押していただきました。

茶会翌日、余り福を蒸していただく

 

【白蓮舎】
ご存知の方も多いかもしれませんが、
元魯山人の窯を先代より受け継ぐ、其中窯の
河村家の奥様にお任せしましたので、東慶寺
所蔵の螺鈿蒔絵聖餅箱を写した茶器や、
檀家でもある前田青邨先生が、宗演老師の為
に描いた観音様のお軸に合う取り合わせを、
河村家ゆかりの道具にて見事に組み合わせて
いただきました。
お干菓子は京都の伊織さんにお願いし、
東慶寺の大イチョウを思わせるイチョウを
すはまで、お祝いの気持ちを込めた
松の葉を有平糖でお願いしました。
また、老師ゆかりの福井より、福井特産
の和紙を思わせる卵白のお菓子、「君ころも」
を取り寄せました。

宗演老師所持の堆朱香合

【書院】
点心は、東慶寺のお檀家さんでもある、
横浜の隣花苑さん。特に和尚は、原三渓が
茶懐石の為に考案し、横浜にちなんだ中華風
の三渓蕎麦を皆様にご賞味いただきたかった
ようで、当日は上段の間にも、三渓翁の軸
を掛けさせていただきました。
その他、上段の間に会記を置かせていただき
ました。

【水月堂】
皆さまにお参りいただきたく、この日は一般
のお参りはご遠慮いただき、茶会におこし
いただいた皆様に水月観音さまをゆっくり
拝んでいただき、隣の部屋では宗演老師
ゆかりの品々の展観席を設けました。
また、
宝蔵での展示も茶券に含ませていただき、
茶席が混みあった際の待ち時間を有意義に
お過ごしいただけるようにしました。

 

茶会が始まる前のお参り

全山使っての茶会となると、私どもも職員
もなかなかに疲労しましたが、それでも、
当日は皆生き生きと働いて、みなさまを
おもてなしできました。
茶の湯をたしなむ友人たちにもお手伝いに
来てもらい、本当に心づよい事でした。

何より、私たちが一番楽しかったのかも
しれません。もてなす事の喜びを存分に
味わい、次につなげたいと思った次第
です。
願わくば、2~3人をもてなす茶事でも、
150人超をもてなす大寄せの茶会でも
変わらず隅々まで心を込めてお迎えが
できるような意識を持ち続けたいと
思います。

様々なご縁に助けられ、恵まれた一日を
過ごせました事に心から感謝の気持ちで
いっぱいです。

さて、余談ですが、
今回、茶席がどちらも裏千家の先生で
あったことから、
「東慶寺さんは裏千家なのですか?」
というようなご質問をいただいたりします。
正直申しまして、愚問だと思います。
この機会にはっきり申し上げておきますと、
寺に何流というのはありません。
私ども住職夫婦は表千家ですが、職員には
裏千家、武者小路千家の人間もおります。
大切なのは、どの流派に所属していること
よりも、その人自身がどうあるかという
事です。
何流ということで線引きをして、何の意味
があるのでしょう?
人間は、なんでも線を引きたがるものですが、
それをとっぱらうことこそ、茶の湯の道の
世界がほんとうに目指すところだと思います。

とある流派のお家元に、ある人が尋ねました。
「表と裏で、どんな違いがあるのですか?」と。
お家元はすかさず、「どうでもええところが
違うんですわ」と仰ったとか。
目から鱗ですね。

ただ、注意したいのは、何でもよいという
事ではありません。流派に属し、その派の
形をしっかりと身に着け、その上で自由に
なるということが大切なのだと思います。
そうなれば、流派がどうのという線引き
などなく、お家元のような境地になれる
のだと思います。

いつの日か、東慶寺オールスターズ…では
ありませんが、流派関係なく茶の湯を嗜む
職員で、釜をかけ、皆さまをおもてなし
できればよいなと思っております。

どの流派のお点前に当たるかわからない、
水屋から運ばれてきた薄茶の点て方も、
お隣の方と、あら違ってる?!
なんていうのもありではないでしょうか。
これこそ、お寺ならではだと思っています。
その時は、皆さま是非一服なさりにいらして
くださいね。

 

*写真は当日のものではありません。後日、
頑張ってくれた職員の為に催した茶会のもの
ですので、当日とは異なります。
「夢」の饅頭は、茶会の次の日に残り福を
蒸して和尚といただいたものです。夢の
字がはかなくなっております…。