高麗卓奉納 釈宗演老師記没後100年記念茶会

2019.11.12

このブログを読んでくださっている皆様なら
もうご存知。
本年、東慶寺では明治の傑僧、東慶寺の
中興開山でもある釈宗演老師の没後100年の
記念事業をいろいろと開催してまいりました。

台風で延期になりました、円覚寺派管長・
横田南嶺老師の講演会も無事に11月2日に
開催でき、四回にわたる講演会を締めくく
っていただきました。
現在編集に少し時間を頂戴しておりますが、
追って動画を配信させていただく予定です。

さて、今回の事業に茶会を組み込みました
のは、住職も私(寺庭)も茶の湯にただな
らぬ関心と興味を持ち、日本が誇る素晴ら
しいこの道の世界を好ましく思い、裏千家
ゆかりの寒雲亭という、どなたさまをお迎
えするにも恥ずかしくない茶室が東慶寺に
備わっていた事がまず前提にあります。

が、一番のきっかけをくださったのは、
何と申しましても鎌倉彫師の三橋鎌幽氏です。
彼が、「記念に何か茶道具をお納めしたい」。
と言ってくださらなければ、
茶会は考えなかったでしょう。

はてさて、何をお納めいただくのか。
よく見る茶器や香合の類も考えましたが、
季節を問うものであったり、
一度見ただけで、良くも悪くも深く記憶に
留まるものも面白くないと思ったり。

そこで考えたのが、格の高い高麗卓は
どうかと。
茶道の主流派である三千家で使われる
というのも決め手でした。
鎌倉の寺として、他ではなかなか見ない
鎌倉彫のお棚を、こういった大切な機会
におつくりいただくというのも魅力的で
ありましたし、流派関係なく釜の掛かる
寺でありたいと願った事もあります。

三橋さんの助言もあり、あえて文様は
彫り込まず、鎌倉彫特有の刀痕を
わずかに残すのみ、
そして色も経年の変化を楽しむべく、
黒に近いものに。
使うごとに赤みが増してゆくでしょう。

天板と地板は違った塗り方で、上に
置かれる道具の類がひきたつように
工夫されています。
気づかぬ人は気づかぬ、なんでもない
ような高麗卓にもみえます。
が、実は違う…というところが、
東慶寺らしい、相応しいお道具に
仕上がったように思います。

庭でもなんでもそうですが、やりすぎたり
作りこみすぎたりすると、
自由が利きません。
余韻や余白があるものこそ、
無限の可能性を持ちますし、
実は豊かなものなのだと思うのです。
見る人の力量も問われるかもしれませんが、
それもまた良いのでしょう。
自分が成長すれば、見方が変わります。

お納めいただいた日、
まずは住職と三橋氏と私とで、
宗演老師のお墓にご報告。

そして、寒雲亭でお棚を拝見しましたが、
こういった素晴らしいお道具があると、
茶室全体も引き締まりますし、
おそらくまたこのお道具が、様々な
良いご縁を結んでくれるでしょう。

三橋さんの気持ちがこもったお棚。
何百年の先まで東慶寺で大切に扱われ、
皆さまに愛でられる事を
願ってやみません。
鎌倉彫師としてはおそらく、
今一番多忙な彼が、貴重な時間を
使ってくださったその心意気、
あっぱれです。

気持ちを形に、見えるものに表す事
の大切さを改めて、
今回学ばせていただきました。
と、お棚のことで随分長くなり
ましたので、茶会そのものに
つきましては、また後日…。