味噌仕込み

2019.02.12

 

昨年より、味噌を仕込んでいます。
ご縁あってこの地に住んで約2年。自分がこのような事をするとは想像もしなかったのですが、季節と共にある北鎌倉の暮らしの賜物でしょうか…。

もうお年を召されていらしたので、数えるほどしか伺えないままに先日旅立たれてしまわれたのですが、近くに住んでいらしたプロ顔負けのお料理の先生に、少しお教えをいただいておりました。
竹のようにすっと通った筋が気持ちよく、審美眼の持ち主で、何ものにも媚びないその姿勢は、短い時間とはいえ私に多大なる影響を与えてくださいました。

長らく茶道を習っており、「師匠というものには、長くついてこそ意義がある。長く師事しなければ意味がない」と思い込んでいた私の考えを覆してくださった御方です。
一瞬の出会いが、その後の人生に大きく影響する事もあるものなのですね。

そんな先生のお教えは、しっかりとお嫁さんに受け継がれ、お料理教室がお休みになっても、お正月前の聖護院かぶらの千枚漬けや、味噌仕込みなど、季節の大切なお料理ごとは、有志が集まって続けさせていただいております。
北鎌倉の自然と、導いてくださる人がいて、有難い事に食にまつわる季節の仕事を怠る事無く学び、続けさせていただけます。

先生のお宅のお味噌は、麹も倍。買ったお味噌とは、そのうまみが比べようもありません。毎年作り続け、「これは5年もの、これは8年物…」などという味噌が並んでおり、私の憧れです。
昨年のお味噌を既に開けてみたくてうずうずしていますが、職員のまかないで使ってしまうとすぐになくなってしまいますので、何年か貯めてから使っていこうともくろんでいます。
文章では先生のお宅の年月を経たお味噌のおいしさは伝えようがありませんが、素材にこだわり、丁寧に家で作った美味しさは、ほんとうにお金を積んでも買えない宝だと思わせてくれるものです。何より無精者の私に、味噌づくりをしようと思わせてくれる美味しさで、さらにお味噌汁のみならず、様々な料理を作ってみたくなります。

かつて、私の友人がある禅僧に「もうこんな年齢になってしまった(何かを始めるには遅い)」といったような事を話すと、「(何かをしようと思ったならば、)死ぬまで間に合います」と一言。
何か新しい事を始めようと思う度に思い出す場面です。「今までしてこなかった」は関係なく、躊躇せずスッと新しい事に取り組める自分でありたいと願っています。

*味噌の保管場所は、庫裏の裏にあるやぐらの中。年間を通して気温が上下しにくく、重宝します。鎌倉らしい保管場所です。大きな甕は、昨年、「もう梅干しを作れなくなったので使ってほしい」と、とある方がお寺に寄贈してくださいましたもの。有難く使わせていただいております。