『台所にこの道具』宮本しばに著
女性の社会進出が目覚しい昨今とはいえ、日々の暮らしの中で、お台所にいる時間が長い方はまだまだ多いのではないでしょうか。
お寺の場合、空いている時間を工夫しつつ、朝から、働いてくれている人たちのまかないづくりが始まり、お客様が見えればお茶を淹れ、座る暇も無く立ち働いている庫裏のお手伝いさん達と時間を決めて一服し、、といった具合に、お台所を中心に一日中くるくると動き回っている感じです。
そんな長い時を過ごすお台所には、目に入って美しい道具たち、使ってて楽しく機能的なものしか置きたくないと願っています。
ものづくりをしている友人達が多い事で、その暮らしぶりや美意識などから学ぶところが大いにあり、特に、伊賀・土楽窯の福森雅武先生や、道歩さんには、得難い教えをいただき、それは私の人生の大きな大きな財産となって今に生きています。
そんな土楽窯と、これまた稀有な存在といえる、宮本しばにさんという親友を引き合わせてから何年が経つでしょう。
野菜料理研究家として、野菜料理の本を出版されたり、ご自宅で料理をふるまわれたり、お料理の先生をされていたしばにさん。いったんその道は突き抜けられたのだと思うのです。
徐々に、日本の台所道具というものに惹かれ始め、ぐっとのめり込み、お店まで開かれて、その道を深めていました。
この度、彼女らしい、とことん綿密で、それでいて、あたたかな心を道具に向けた研究結果の集大成とも言える本ができあがりました。
『台所にこの道具』宮本しばに
ーこれじゃないとダメなのだ。そう思える道具があるのは幸せです。
うんうん、ウンウン。この表紙が目に飛び込んできた途端に、何百回もウンウンと頷きました。
私自身、しばにさんのお墨付きの道具にはその時点でもう信頼を寄せられますし、もちろんデザインも優れているものばかりですから、すり鉢から塩壺まで、彼女に見極められたものたちを日々使っています。
家庭の台所で、このような道具たちが生き生きと働いていれば、少しずつでも、人々が、日本が変わってゆくのではないでしょうか。
日々の積み重ねとはなかなかに馬鹿にできないもので、どうでも良い、使えれば良い、というものに囲まれて暮らしているのと、こだわりを持って、愛すべきものたちに囲まれているのとでは、その人の人生や、人としての扱われ方まで違ってくると思えるのです。
さて、しばにさんの本と道具のことをご紹介するだけでなく、お寺としては何ができるかな?と考えました。
まだ詳しい時期は未定ですか、来年から、宮本しばにさんにお越しいただいて、ゼミナールのような会を持ちたいと考えています。
単に台所道具を使った「お料理教室」ではないのです。インスタ映えなんてものは微塵もないでしょう。もちろん、一品、二品は、皆で何か作って一緒にいただきましょう。
そしてその後、皆さんが持っている目に見えないものを分かち合うような会にしたいのです。
幸せなこと、新たな気づき、苦しかったこと、色んな思いを吐露し合うことで生まれるものがあると思うのです。
ただそれには、聴く人の力が問われます。
そういう意味では、時に「この人、髪の毛あるけど、やってる事は坊さんというか、尼さんだな。あ、また修行してはる、、」。
と思えるようなしばにさんが中心にいてくださるのは心強く、皆に良い影響があると思えるのです。
世の中には、出家の形を選択せずとも、まるで本物よりも本物みたいな人がいるものです。
皆さんが話をしやすいように、しばにさんか私(寺庭・住職の妻です)が皆さんにご紹介したいような易しくも深い文章を用意して、それについて話し合うのも良いかもしれないと思っています。
会の始まりには、和尚さんと、本堂や水月堂で読経し、閑かに坐る時間をご指導いただきましょう。
ちなみにこの会は、独断で、女性のみ、30歳以上の方限定の会とします。それよりお若い方は、細く長く会を続けられればと思っておりますので、30歳になるのをお楽しみになさっていてください。
さて、説明はさせていただきましたが、全くよくわからないかと思います。それはそうなのです。何故って、参加する皆さんに、これを提供しましょう!と明言できる会では無いからです。
参加者ご自身で、この会の意義をみつける会だからです。
人によって、その日に腑に落ちる事、発見、感動、癒し、感じ方はそれぞれです。
私たちが望むのは、皆が自身に良い種を蒔いて、大切に育てて、それがやがて花を咲かせ、知らぬ間に自身の拠り所、芯になれば良いなというところです。互いが互いのそんな成長をあたたかく感じたり見られたりしたら、素敵なことではないでしょうか。
思いが先走って、長く熱い文面になっておりますが、ふとご縁を感じてくださった方、ピンときた方が運んでくだされば良いなと思っております。
また来年にご案内させていただきます。
どうぞよろしくお願い致します。
宮本しばに*studio482+
進出が目覚しい昨今とはいえ、日々の暮らしの中で、お台所にいる時間が長い方はまだまだ多いのではないでしょうか。