二十三夜さま
2019.02.03
東慶寺の門をくぐり階段を昇った右手に、美しい女性のようなお姿をした像がお祀りしてあります。お寺では「二十三夜さま」と親しみを込めて呼ばせていただいておりますが、正確には「二十三夜塔(にじゅうさんやとう)」といい、彫られている像は、勢至菩薩様です。
この像についてをお話するには、まず月待(つきまち)についてをご説明せねばなりません。江戸時代、1800年台初頭に特に盛んだったようですが、十五夜、十九夜、二十三夜など特定の月齢に、講といわれるグループで、月の出を待ちながら飲み食いしていたそうです。
何かを願うという宗教的行事の意味合いもありますが、男性だけの講、女性だけの講などもあったようですから、日ごろの愚痴やなんかも話して発散していたのでしょうか?!
村人達の交流や情報交換の場としても、飲み食いしながら打ち解けて話す場として、地域社会の運営に重要な役割があったのではないでしょうか。
さらにこの塔には、「(勢至菩薩の梵字)二十三夜待供養」「宝暦四(1754)庚戌天 當村施主」「四月吉日 四十五人」とあります。
今となっては、この塔がずっと東慶寺にあったものなのかもわかりませんし、当村というのが、どこの村を指すのかもわかりません。
寺で預かっている女性達が月待をする事が可能だったのかもわかりませんが、もしも可能だったとしたら、少しワクワクしてしまいます。
駆け込んだ女性たちが月に一度許された夜更かしの日。月を待ちながら何を語ったのだろうと…。
そんな事もお知りいただいた上でお参りいただき、この一番最初にお参りの皆さまを迎えてくださる勢至菩薩様をご覧いただくと、またひとつ違った趣のお参りとなるのではないでしょうか。